よもやま話


◆奏法についてのメモ その5

 

音程合わせについて その5

 

(追加記事 : Shruti Box を無料と紹介しましたが、いつの間にか100 円になっていました。😌

でも私なら1 万円でも買います。昔はチューナーを2台使ったりしたんですから大助かりです。スマホを機内モードにした方が着信音予防には良いですね。これに加えてメトロノーム(これは別に用意)を小節のアクセントなしで一緒に使うと効果的です)。

 

 

 

音程って難しくて私には無理?

 いえいえそんなことはないと思います。例えば姿が見えなくてもその人が誰か、を知人なら大抵は声だけで判別できますよね? または、朝ドラの出演者が「なんちゃって方言」を使っているとその微妙な音の上げ下げのヘンテコさが地元民としては気になりますよね? 

 これってすごい耳の能力ではないでしょうか? 普段から私たちの耳はとても繊細に音色や音高の変化を聞き分けていると思います。その力を音楽に向けてやるだけのことです。

 ただし「人の声」を聴く力は「生存」とともに身についていますが、音楽は人工的なものですので「後天的に」あれこれやって、聴く力を身につけないと、ということですね。「なんちゃって方言」も非地元民ならあまり気にならないと思います。音程(ハーモニー)村の地元民になりましょう。

 

あー面倒くさーーーい! もっと簡単で楽しい練習はできないの?

 うーむ。あなたは欲張りですね。  わかりました。それなら奥の手です。

 ただし多少の投資は必要です。(もしここにリンクが貼られていたら詐欺サイトです注意!)

 

1)「オカリナ三重奏のための地球は笑顔」を購入する。

2)  ソプラノC(ポテト流の名前ですのであなたのはアルトC と書いてあるかもしれません)を用意する。

3)  CD に合わせて演奏する。

  以上です。

 

まず、全体像をつかむためにCD を何曲か聞いてみてください。

◯意図的にピアノ伴奏を極力使わないようにしています。(自然な音程感のために)

◯拍をつかみやすくするためにできる限り打楽器を加えています。

◯打楽器のない曲では伴奏にハープ音を使って伴奏の濁りを減らしています。

 

次に気に入った曲をCD ガイドと一緒に演奏します。

◯CD は自分と同じぐらいの音量でかけてください。ガイド演奏は合成音色のフルートです。ビブラートがかかっていますが、これによりCD に合わせて演奏するとき、音程の許容量が少し増えます。

 

CD と一緒に吹くだけで良いんですか?

◯そうなんです。実は音程はそれだけを習得するのはなかなか難しいのです。常に動いている音楽の中でその場にぴったりの音程を見つけ出さないといけません。そのためには演奏する曲のスタイル(難しくいうと音楽様式)の理解やテンポ、アーティキュレーションなどが、はまっていることが大事です。CD に合わせることで枠が決まりますので、音程合わせ(ユニゾンのズレ解消)に集中できます。

 

◯よくある伴奏CD は平均律に調律されていることがほとんどです。ところが、平均律というのは◯長調と同じように、やはり人為的に作り出した調律法です。鍵盤楽器は構造上、演奏中に音程を操ることができませんので、平均律をとても重宝します。しかし、歌や弦楽器、管楽器など自在に音程を操れる楽器にとっては必要ありませんし、かえって良さを損なうことになります。鍵盤楽器以外の演奏では余程のことがない限り平均律で演奏することはありません。(というかまずできません)。(有名なバッハの平均律クラビーア曲集も翻訳の問題で平均律と名前がついていますが、実際は「良い調律をされた」の意味であり、古典調律が採用されていました)。

 

◯地球は笑顔のCD は平均律よりも5度や3度のハーモニーが美しい古典調律を採用していますので、一緒に演奏しながらユニゾンのズレを解消していくことで、美しい音程感やハーモニーを習得することができます。これは、他のCD ではまず配慮されていません。(実は企業秘密なんですが公開しますっ、てそもそも企業じゃないシー)。

ユニゾンのズレが収まってきたら今度はカラ伴奏トラックでも試してください。

  

◯余談ですが、ヨーロッパの古都で時を告げる鐘の音は余韻が濁りにくいように独自の美しい調律法を育ててきました。ところが日本の学校で採用されている電子チャイムは残念なことに美しさへの配慮に欠ける平均律となっています。

 一年中外れた音程を子供達が聞いていることを思うと胸が痛みます。しかも故障でさらに音痴になっているのまで放置されています。残念なことに誰も気づかないし、修理もされません。音の環境を整える公的機関がないんですね。

 

◯もう一つ余談の愚痴ですが、ある地方都市の中央公園で夕方5時に美しいカリヨンの音が流れてきました。聴いていると途中からピッチも曲も全く違う別のカリヨンの音が混ざってきました。「エーッ!」と思う私に追い打ちをかけたのは、さらに別の電子チャイムの音でした。市役所、学校、もう一つは不明、のとてもまともには聞けない三重奏です。これって「音楽が溢れる文化的な街」なんでしょうか?。

 このことを、気づいた者として是正してほしいと思いましたが、「どこの誰に言えばいいの?」音楽を志すものとしては、公共の場においての音のマナーの大切さを次世代に伝えること、を常に意識したいですね。そしてその中身を「共感できるもの」へとグレードアップしたいです。美しいハーモニーへの「共感」は普遍的ではないかなと思います。

 

「面倒くさーーーい練習」もやりたい変な人のためには、また耳楽問道場の続きを書きます。

 

 


音程合わせについて その6(面倒臭ーーーい練習が好きな変な人のために)

 

◯あなたはユニゾンのズレに気がつくことができ、自分の音を修正できる。

◯あなたは正しい音階を奏でることができる。また、メンバー皆がその状態である。

 

 ここまで来ていればオカリナアンサンブルで美しいハーモニーを奏でることができます。

と言いたいところなんですが、実はあといくつかのことが調整されていないといけません。

 

1)グループの編成は1パート一人である。

 同一パートを複数人で演奏するとハーモニー以前にユニゾン合わせに人生の大半を費やすことになりそうです。これは疲れる作業ですのであまりオススメしません。ただし、各5人の計20 人以上もおられればその時は音程の線が太くなるので、話は違います。

 

2)使用楽器はソコソコの性能のものである。

これも、お土産品、工作用、手作り系など大幅に基準ピッチや調律の外れた楽器が混じっていると、とても苦労することになります。

 

3)使用楽譜はきちんと編曲されたものであること。

 残念なことにアマチュア編曲で音域のことがまるで理解されていない編曲や、プロ編曲でもオカリナの特性を知らずに書かれているものは、演奏に苦労するばかりです。楽譜にf p やクレッシェンド、ディクレッシェンドが多用されているときは要注意です。プロ編曲でもSc やBf がオクターブ下げ記譜であることを勘違いしているものをいくつも見たことがあります。

 音域のことについて正しい知識を獲得してまた、広めるためにもソプラノ、アルト、テナー、バスの各音域の楽器名はSc、Af、Tc、Bf、であることを理解しておきたいです。

 混乱しがちなのはここでいうソプラノ= Sc が現在はアルトC という名前で広く流通してしまっていることです。どこかで整理することを始めないといつまでたっても勘違い編曲が後を絶たない悪循環になりそうです。もう一度このよもやま話の「楽器名について」の項をお読みください。バス-Bf はヘ音記号表記であることが望ましいです。

 

4)f 管は実音表記の楽譜を使うこと。

 すぐには無理でも近い将来的にそうなれるように準備を進めましょう。「地球は笑顔」がうってつけです。この先の練習では自分の音がドレミファソラシドの中のどの音なのかということが大事になります。吹いてるんだからわかって当たり前でしょう?と思われがちですが、実はf 管を移調譜で演奏している人は「ミ」を「シ」だと思っていることになります。ドミソの和音の「ミ」の音についての話題は、自分を「シ」だと思い込んでいる人には伝わらないですね。とは言ってもここでつっかえる人も多いのではないかなと思います。

 そこで、バス-Bf があまり普及していないようですので、以前掲載した賛美歌の楽譜のいくつかを編成がSnSAT になるように別版を作成しました。(ただし全体の音が上がっていますので、歌との親和性は減っています)比較的ゆったりした音の動きでしかも各パートのリズムがよく似ているので、音になりやすいのではと思います。 Sn とA 担当の方は少しづつ実音記譜に慣れていかれることを期待します。これらを使ってこの先実際のハーモニー練習をしていきます。

  

5)ハーモニーづくりをするにはピアノ抜きで。

 ピアノは平均律の調律をされていますので、音量のことはさて置いたとしてもやはり、ハーモニー作りのパートナーとしては向いていません。電子ピアノではたまに古典調律を選択できるものもありますが、その意味合いを知らないと活用は難しいかもしれません。

 時々歌の指導などで、ピアノで単音をポーンと弾いて「ハイこの音!」という光景に当たることがあります。首を掴まれて「ここに来なさい」と言われているような窮屈さを感じます。本当は座り心地の良い椅子を用意して「ここにかけませんか?」と言って欲しいですね。 喜びのない音程はつまらないです。ピアノはどうも便利で強力すぎて、オカリナの揺籃期には向いていないように感じます。どうしても使うなら、古典調律できる電子ピアノでかつ音量は控えめ(理想的にはオカリナ一人分プラスα 程度)で。

 

 

 

お待ちかねの 耳楽問道場ハモり編① 5度の響きを聞き取る

 

◯さて、本当にやっとハモリの勉強です。ユニゾンについてはすでに勉強しましたね。ハモるにはユニゾンに次いで5度の響きを感じて合わせることが大事です。というかそれができれば、あとは以下同文でほぼ大丈夫です。しかもドリア旋法の気まま演奏で「レ」と「ラ」の5 度についてはある程度予習済みと思います。ここではハ長調のキホンのキ「ド」と「ソ」の5 度の響きを聞き取りをしましょう。純正な5度が得られまた、部分音と仲良しの「純正律」の調律になっています。

 

▼まず、「ド」の持続音に対して「ソ」が正しい音程で加わってきます。

その後、「ソ」が低めに一旦ずれた後で、もう一度正しい音程になって終わります。これを2回です。

▼次は逆向きですね。「ド」の持続音に対して「ソ」が正しい音程で加わってきます。

その後、「ソ」が高めに一旦ずれた後でもう一度正しい音程になって終わります。これも2回です。

▼さて、5度の響きが合っている時、ずれた時の違いは感じられましたか?

自信がつくまで何度も繰り返してください。

 では応用問題です。次の1、2はそれぞれどちら側にずれていますか?

 

答え 1 上 2 下

なぜ「ソ」が大事かというと、

1)音は単音でもすでに和音になっています。

 ちょっと意味不明ですね。でもこれは音が振動によって起きている宿命で、元の音に対して整数倍の振動数のごく小さい音が鳴っています。僧侶の読経、お一人なのに声がダブって聞こえたりしませんか?静かな環境で力強い低めの声が出ているとそれに含まれているオクターブ高い音や5 度関係の音が浮き上がって聞こえてきます。本当はあらゆる音にこの部分音が含まれていますが、周りの音にマスクされて聞き取るのは難しいのです。

 そしてこの5 度関係の音を他の人が加えると、元からの音に加えて一層響きが豊かになり、2音がしっかりと結びつく感じが出ます。これは含まれている部分音がオクターブユニゾンの次には5 度関係の音が飛び抜けて強くて、2、3、4、6、7度の比ではないからです。この結びつき感を私たちは「ハモり」と感じているようです。

 というわけで5度関係の音「ド」に対しては「ソ」が一番大事なんです。

 

2)高低ではなくて間隔の具合

 「ソ」が一番大事なんですが、「ソ」自体が高い、低いというのではなくて「ド」と一緒に鳴っている時の両者の開き具合が大事なんです。覚えたいのは「ソ」の高さではなくて、「ド」と「ソ」が一緒に鳴っているときの響き方です。ですのでチューナーで「ソ」だけを測っても意味は薄いです。

 様々な表現があると思いますが私は「ビーン」という角ばった響きを目安にしています。平らな板に垂直に太い角柱を立てたときのような「緊張感」、「ソ」が加わってきたときに、自分がつまみ上げられるような感覚、「ド」に対して自分が「ソ」として加わった時は、流れの本流に引きずり込まれる感じ、是非みなさんも「自分流の響きの感じ方」を見つけて、記憶してください。それが常にハモることの根本となります。

 俗に「絶対音感」ということが音楽的に優れていることの代表にあげられることもありますが、それは誤りだと思います。「ある音の高さ」が任意に見つけられることは便利でしょうが優位というほどではありません。本当に大事なのは「相対音感」というか5度の響きの自分的な目安、記憶があるかどうか?だと思います。

 他の音程も大事ですが、わたし的には「以下同文」で結構こと足りています。ただし感じ方の中身は「安息感」や「違和感」「躍動感」など色々と変化しているようです。

 また、実際の演奏では2音のみのハモりよりも3、4音でのハモりが多いので、5度以外に3度が加わってくることが多いですね。その時にはまた別の「響きの感じ方」でやることになります。

 ついでですが、いまだに「絶対音感」への信仰を持たれる方も多いようですので、もう少し解説します。

 

◯そもそも日本では敵爆撃機や敵艦船のエンジン音を聞き分ける目的で「絶対音感」の英才教育がなされたという悲しい過去があるそうです。この頃に神話が成立したようです。

◯周波数を聞き分けられる特異な方はおられるとの海外の研究はありますが、音楽的な才能は特になかったそうです。音楽能力は大部分が後天的な習得物だと思います。

◯「絶対音感」の人の音程の根拠はなんでしょうか?幼児期に身近にあった楽器でしょうか?

もしもそれのチューニングがずれていたら? そこは不安ですね。

◯私の知人で「絶対音感」を持つために移調楽器の演奏に苦労されている方がおられます。

例えばクラリネットやトランペットは楽譜の「ド」が「シ♭」なので困惑されるようです。

◯近頃バロック時代の音楽は当時のコピー楽器、基準ピッチで演奏することが多くなっています。そうすると全部の音が半音程度下がります。「絶対音感」の方は大困惑です。

 

 私はといえば「絶対音感」は持ち合わせていませんし、別に持ちたいとも思いません。

ただし1 日のうちに何度かドレミファソラシドに触れていますので、30 分程度は記憶しているようです。なんと鳥類は絶対音感だそうです。(3歩歩いても大丈夫なんかなあ?)

 

 

耳楽問道場 ハモり編②  5 度の響きを調整する

 

 その1では響きの聞き取りでしたが、今度はあなたが「ソ」を演奏して「正しい音程」から「低めの音程」あるいは「高めの音程」へ、そしてもう一度「正しい音程」へとゆらゆらしてみてください。音程の上下動(5度の間隔が適度、狭いあるいは広い)に伴う響きの変化を感じながら体験量を増やしてください。体験量を増やすほどよりはっきりと違いが感じられ、合った時の気持ち良さも増えていくはずです。

 

5 度の響き作り に自信を持てるようになったらShurti box (ここでは単音で使います)やチューナーなどの基準音を頼りにレ(ラ)、ミ(シ)、ファ(ド↑)、ソ(レ↑)、ラ(ミ↑)についても上側5度の音程を確かめてください。音は変わっても「5 度の響きの感じ方」は基本的に同じですが、それぞれの使用楽器の個性によって、息量の変化は異なります。

 音程を「息の強弱の感じ」に置き換えて覚えている方は、ここでしっかりと「耳で覚える」に変えることが大事ですね。「聞きながら吹く」ことができるようになるまでには、結構時間がかかるはずです。自分を聞き、相手を聞き、全体を聞く。それが目標となります。

 

 さて次は賛美歌楽譜での実践編なんですが、ここに来るまでにあなたやあなたのグループがどういう風に練習しておられるのかは、まるで推察できません。(それは仕方ないですね)

 

 音程についての話題も大分奥まできました。この先の話題はオカリナ四重奏でア・カペラ演奏するためのノウハウですので、「あまり私の趣味ではない」という方がおられても不思議ではありませんし、むしろそちらが普通なのではないかなと思います。合唱団でも大概の場合はピアノ伴奏付きであり、ア・カペラはどちらかといえば特殊なやり方になると思います。

 

 そこで「音程の合わせ方」の記事は一旦ここまでとします。一連の記事についてのご感想やご質問をメールでお送り下さると嬉しいです。ご質問には可能な限り回答いたします。

 また、独習の難しそうな項目(音程練習の中間チェック、楽器の性能の判断など)や、この先の賛美歌での実践編についてはzoom でのオンラインレッスンを受付することにいたします。

 

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日暮れて四方は暗く(低音テナー版)
abide with meupT2.pdf
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神共にいまして(低音テナー版)
GodbewithyouupT.pdf
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愛する神にのみ(低音テナー版)
WernurdenliebenGott2upT.pdf
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神の御子は(低音テナー版)
adestefidelesupT.pdf
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これらの記事の著作権はスイートポテトオカリナ合奏団および小林達夫が保有します。

引用についての制限は特にありませんが、その際は必ず出典:オカリナよもやま話(スイートポテトオカリナ合奏団)と明示なさってください。楽譜類の転載および商用利用については制限させていただきます。